住宅に床暖房を入れるときに、電気式と温水式のどちらを導入するか迷う人が多いようです。
両者はそれぞれ特徴が異なりますが、いったん導入すると変更するのは困難なので慎重に選ぶ必要があります。
今回は、電気式と温水式の床暖房の特徴や、それぞれの使用感、メンテナンス性の違いなどを比較して紹介していきます。
電気式と温水式の床暖房の特徴
まずは、電気式と温水式それぞれの特徴を詳しく説明します。
電気式床暖房の特徴
電気式の床暖房は、暖気ヒーター式とも呼ばれ、発熱体に電気を通して放熱する仕組みです。
電気式と一口で言いますが、実は以下の3種類があります。
●電熱線ヒーター式
●蓄熱式
●PTCヒーター式
それぞれ簡単に説明します。
電熱線ヒーター式
床下に電熱線を埋設しているもっともシンプルなタイプです。
床下にホットカーペットを埋め込んだイメージです。
蓄熱式
深夜電力を利用して、蓄熱材に熱を貯める方式です。
電気代を抑えつつ、24時間の床暖房を実現します。
PTCヒーター式
室内の温度差を感知して、熱を調節してくれるタイプです。
PTCヒーター式では室内温度と床の温度を一定に保ってくれることが特徴です。
温水式床暖房の特徴
温水式の床暖房は、パイプを床に張り巡らせておき、お湯を流すことによって温めることが特徴です。
お湯を作る方法として、以下の5タイプがあります。
●ガス
●灯油
●電気(エネファーム)
●ハイブリッド式
●ヒートポンプ
それぞれを簡単に説明します。
ガス
ガス給湯器で沸かしたお湯を、床暖房のパイプに流します。
床暖房に使える給湯器が必要です。
灯油
灯油式ボイラーで沸かしたお湯を、床暖房のパイプに流すタイプです。
電気(エネファーム)
電気でお湯を沸かすタイプです。
天然ガスから採取した水素と、空気中の酸素を反応させて電気を作ることがエネファームの特徴です。
ハイブリッド式
ハイブリッド式は、ガスと電気の両方を使うタイプです。
ヒートポンプ式
エアコンと同じ原理で大気の熱を利用することで水を温めて温水を作ります。
電気式と温水式の床暖房の使用感を比較
電気式と温水式の床暖房について、使用感を比較してみました。
立ち上がりの速さの違い
立ち上がりについては、温水式のほうが優秀です。
温水式は立ち上がりが早く、すぐに適温になるので快適です。
電気式は適温になるのに時間がかかるため、ランニングコストも高くなってしまいます。
温度ムラの違い
電気式は、電気線の結合部分が冷たく感じてしまうことがあります。
それは電気式の床暖房システムには、結合部分に熱を伝える均熱板がないものが多いためです。
対して温水式は、ほとんどのタイプに床全体に均熱板が設置されています。
そのため床全体をムラなく均一に温められるので、どの場所にいてもポカポカと快適です。
乾燥具合の違い
床暖房はエアコンと異なり、温風を吹き出すわけではないので空気が乾燥することはありません。
ただし電気式床暖房だけでは、快適と感じる温度まで部屋を暖められないことがあります。
その場合エアコンを併用することも考えられ、そうすると部屋は乾燥してしまいます。
温水式は単体でも十分な暖かさを確保できることが多く、エアコンを併用しなくても問題ないケースがほとんどです。
接触面の違い
電気式は閉塞面では温度が高くなる傾向があり、長時間同じ場所に座っているなどしたときには、熱いと感じることがあります。
温水式は温水が常に巡回しているので、閉塞面でも高温になりにくいため快適です。
温水の温度も40度程度までしか上がらないので、熱くなりすぎることもありません。
使用感では温水式に軍配が上がる
ここまで見てきたとおり、使用感のみに限っていえば、床暖房は温水式に軍配が上がります。
それでは設備設置やメンテナンス性についてはどうなのか、次章で比較してみましょう。
電気式と温水式の床暖房の設備設置やメンテナンス性を比較
使用感については温水式に軍配が上がりましたが、設備の設置やメンテナンス性についてはどうなのか、比較してみました。
設置の容易さ
設備の設置については、温水式よりも電池式が容易です。
電気式は床下に電気ヒーターパネルを敷くだけなので、簡単なことが特徴です。
対して温水式は、温水パネルを敷き詰める必要があります。
さらに温水を循環させるパイプや、導入する機種によってはガスや灯油といった熱電源設備の設置も必要です。
新築時なら問題ありませんが、リフォーム工事で温水式の床暖房を設置するのは工事が大がかりになりがちです。
リフォームで床下暖房を取り入れるなら、電気式を採用することをおすすめします。
導入費用
床暖房の導入費用については、温水式は電気式よりもやや高くなります。
新築一戸建てで熱電源がガスの温水式床暖房を導入すると、約70~80万必要になります。
循環器をハイブリッド製品にすると、さらに割高になることも考えられるでしょう。
対して電気式は、新築一戸建てへの導入費用は約50~60万円程度です。
導入費用に関しては、電気式がお得です。
床暖房本体のメンテナンス性
メンテナンス性については、電気式も温水式もどちらも変わりません。
エアコンのフィルターを掃除するような、日々のメンテナンスはとくに必要ないことが、床暖房の特徴です。
温水式床暖房は熱電源のメンテナンスが必要
温水式の床暖房は、室外に熱電源設備を備える必要があるので、そちらが故障する可能性があります。
床暖房の熱電源設備は、給湯器としての役割を兼ねていることが一般的です。
そのためもしも熱電源が故障した場合には、床暖房だけではなくキッチンやお風呂のお湯も使えなくなってしまいます。
快適な生活を送れなくなり、修理費も発生してしまいます。
耐久年数
耐久年数については、電気式は建物と同じぐらいの年数は耐えられるといわれています。
温水式についても、30年程度は使用できるとされていますが、熱電源はそこまでもたないことが多いようです。
たとえば一般的なガス器具の耐用年数は10年程度なので、同じぐらいで劣化が進み、交換が必要になると考えておかなければなりません。
長期的なランニングコスト
長期的なランニングコストに関しては、温水式は毎月5,000~8,000円程度の費用が発生するのが一般的です。
とくに熱源が石油ボイラーのものよりも、ヒートポンプ式床暖房のほうが、電気代は安くなります。
対して電気式の床暖房は、1万円以上の電気代がかかることが多いようです。
ただし電気会社との契約プランによっては、深夜電力を効果的に使うことも可能なので、使い方次第ともいえます。
導入・メンテナンス・ランニングコストは電気式に軍配が上がる
電気式は、導入コスト自体は安くつきますが、ランニングコストが高くなります。
温水式は、導入コストは高いものの、毎月のランニングコストは電気式よりも安くすみます。
ただし温水式は熱電源設備の交換費用も念頭に置いておく必要があるので、20年、30年先まで考えると、電気式に軍配が上がります。
まとめ
床暖房について、温水式と電気式の特徴や、両者の使用感、コスト面、メンテナンス面について詳しく比較してきました。
使用感については温水式が比較的優秀でしたが、コスト面やメンテナンス面では電気式に軍配が上がります。
どちらを導入するかは、家の新築時に取り付けるのか、リフォームするのかによっても異なります。
両者の特徴を理解したうえで、マイホームにはどちらが向いているのか、業者と相談するのがおすすめです。